KOLマーケティングとは?注目されている理由や活用手順を解説

KOLマーケティングとは、中華圏で利用されているSNS上で「消費者の購買意欲」に影響を与えている人物を起用し、自社ブランドや商品などを現地の人々にPRするビジネス手法です。

今回は、KOLマーケティングの有効性をデータで示したうえで、導入するメリットやデメリット、地域別のトレンドに合わせた活用方法などを解説していきます。

KOLの選び方についてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

KOLマーケティングとは?

KOLマーケティングとは、「Weibo」や「WeChat」といった中華圏で人気のSNSで多くのフォロワーを獲得しているユーザーを起用し、現地の消費者へ向けて行うマーケティング手法です。

この章では、KOLマーケティングについて以下の3項目に分けて解説していきます。

  • KOLとは?
  • 「KOL」と「インフルエンサー」の違い
  • 「KOL」と「KOC」の違い

では早速、上記の3項目について順番に見ていきましょう。

KOLとは?

マーケティングにおけるKOL(Key Opinion Leader:キーオピニオンリーダー)とは、中国で主流のSNSで絶大な影響力を持つ「権威ある専門家」を指しています。

KOLは単純にSNSのフォロワー数が多いというだけでなく、以下の条件をすべて満たしているのが特徴です。

  • 中華圏で主流のSNSで影響力がある
  • 特定の分野におけるキャリア、専門性が高い
  • 優れたコミュニケーション能力
  • 新しいものを取り入れる柔軟性

KOLは、もともと医師などを指す医療用語として使用されていました。しかし現在では、新たなマーケティングコンセプトとして中国・香港・台湾などのアジア圏を中心に広まっており、「中国版インフルエンサー」や「台湾版インフルエンサー」とも呼ばれています。

「KOL」と「インフルエンサー」の違い

KOLとインフルエンサーの決定的な違いは「専門性の有無」です。より端的に表すと、以下のようになります。

  • インフルエンサー:影響力のある「素人」でもOK
  • KOL:影響力のある「玄人」のみ

たしかにKOLとインフルエンサーには、「SNSで大量のフォロワーを獲得している」「消費者の購買意欲を高める力」など、多くの共通点があります。

しかし、KOLはインフルエンサーが持っている能力に加えて、「特定分野のスペシャリスト」という大きな武器を備えているのです。

KOLには以下のような強みがあるため、より高いレベルの訴求効果が期待できます。

  • プロ視点の解説
  • 専門家としての知識や経験に基づく提案
  • 消費者に与える安心感
  • 深い信頼の獲得
  • 商品やサービスの高度なブランディング

「KOL」と「KOC」の違い

KOC(Key Opinion Consumer:キーオピニオンカスタマー)とは、商品を使用した感想などをSNS上で発信している「消費者」のことです。

KOCが発信する口コミ情報は他の消費者に影響を与えるものの、あくまで一般消費者としての意見ですから、ユーザーからの信頼度はあまり高くはありません。

一方、KOLはプロとしての確かな知識・経験にもとづく情報を発信しているため、信憑性の高い情報元としてフォロワーから絶大な信頼を寄せられています。

KOLマーケティングの対象SNS

KOLマーケティングは、中国・台湾・香港・タイ・マレーシアなどの中華圏に住む消費者を対象にしたマーケティング施策です。そのため、KOLマーケティングを展開する際は、以下のような「中国発祥のSNS」が主戦場となります。

SNSの種類月間アクティブユーザー数特  徴
TikTok
(ティックトック)
・12億1,800万人(世界)
※2023年10月時点
・1,690万人以上(日本)
※2021年10月時点
・ショート動画に特化している
・メインユーザー層は10代~30代
WeChat
(微信:ウィーチャット)
・13億2,700万人(世界)
※2023年10月時点
・メッセンジャー機能を備えた中国版LINE
・LINE+Facebook+Twitterのようなイメージ
・メインユーザー層は35歳以下の若年層(約73%)
Weibo
(微博:ウェイボー)
・5億9,900万人(世界)
※2023年10月時点
・拡散力が高い中国版のツイッター
・メインユーザー層は17~33歳(約79%)
RED
(小紅書:レッド)
・2億6,000万人(世界)
※2022年末時点
・中国版Instagram
・Instagram+Amazonのようなイメージ
・メインユーザー層は1990年代半ば~2010年序盤生まれのZ世代(約72%)
・約70%が女性ユーザー

さらに、以下のような世界的にメジャーなSNSもKOLマーケティングの対象に含まれます。

  • Youtube
  • Facebook
  • Instagram

KOLマーケティングが注目される理由

なぜKOLマーケティングは世界中から注目されているのか、その理由は中華圏ならではの「文化」と「市場の特性」が大きく影響しています。

たしかに、圧倒的な人口を誇る中華圏の消費者にアプローチできれば、大きな成果をあげることができるでしょう。ただし、日本や欧米のような「資本主義国家」と「社会主義国家」とでは、文化や市場の特性に大きな違いがあり、この点を理解していなければ成功は望めません。

そこで注目されているのが、社会主義国家ならでは文化と市場特性を理解し、なおかつ現地の消費者から絶大な信頼を獲得している「KOL」の存在です。ここからは、KOLマーケティングが注目されている理由についてより理解が深まるよう、以下の3項目に分けて解説していきます。

  • 中国のライブコマース市場が5年で54倍も成長
  • 「金盾(きんじゅん)」の存在
  • 中国人は「口コミ」を重要視する

では早速、上記の3項目について個別に解説していきます。

中国のライブコマース市場が5年で54倍も成長

KOLマーケティングが注目されている1つ目の理由は、中国のライブコマース市場が5年で54倍も成長しているという点です。ライブコマースとは、動画をリアルタイムで配信し、視聴者とチャットで質疑応答しながら商品を紹介・販売する手法を指しています。

まずは、三井物産戦略研究所が2020年12月に公開した「拡⼤する中国のライブコマース市場」のデータをご覧ください。

「拡⼤する中国のライブコマース市場」のデータ

出典:三井物産戦略研究「拡⼤する中国のライブコマース市場」

上記の通り、中国のライブコマース市場は2017年~2021年の5年で約54倍もの成長を遂げており、20,000億元(日本円で約35兆円)の目前まで迫る勢いです。ライブコマース市場の急伸に伴い、より一層KOLのニーズが高まると考えられます。

「金盾(きんじゅん)」の存在

KOLマーケティングが注目されている2つ目の理由は、社会主義国家である中国ならではのインターネットの検閲システム、「金盾(きんじゅん)」の存在です。

まず大前提として、中国政府は国内の全国民および民間企業に対して、インターネット上での表現を厳しく規制しています。そのために導入しているのが、いわゆる「グレート・ファイアウォール」の一種である「金盾(きんじゅん)」なのです。

「金盾(きんじゅん)」は中国全土を網羅する国家の情報管理システムであり、インターネット上の監視はもちろん、不適切な表現を発見した場合は接続規制や遮断する機能も備わっています。

とくに企業は中国政府によって厳しく監視されており、何事も「ファクト」より「政府の意向」を優先する、つまり「寸度」するのが一般的です。もちろん中国の国民はこのような事情を熟知しているため、企業のプレスリリース・マスメディア・広告に対する信頼度は、あまり高くはありません。

だからこそ、中国では専門家として根拠に基づく「ファクト情報」を発信しているKOLが、多くの消費者から支持されているのです。

中国人は「口コミ」を重要視する

中国人がマスメディアや広告より「口コミ」を重視するのも、KOLマーケティングが注目されている理由です。中国人が口コミを重視する理由は、前述したインターネットの検閲システムによる表現の規制だけでなく、「圏子(チェンズ)」という文化的な背景が影響を与えています。

「圏子(チェンズ)」とは、同じ地域・趣味などを共有する人々で構成された、小さなコミュニティのことです。昔から民族同士の戦争が多発していた中国では、国家からの情報よりも圏子内の口コミ情報の方が信用されてきました。

このような文化的背景は、現代人にも影響を与えています。つまり、中国人がインターネット上の「口コミ」を重視するのは、「圏子(チェンズ)」の名残でもあるのです。

KOLマーケティングのメリット

企業がKOLマーケティングを実施するメリットとして、以下の3点が挙げられます。

  • 現地での認知度アップ
  • 現地の消費者に信用されやすい
  • 日本にいながら海外に向けてPRできる

ここからは、上記3つのメリットについて詳しく解説していきます。

現地での認知度アップ

企業がKOLマーケティングを導入して得られる1つ目のメリットは、「現地での認知度アップ」です。

日本の企業が国内でブランドの認知度を向上させるのは、そう難しくありません。とくに店舗を構えている企業やテレビCMを導入している企業であれば、なおさらでしょう。

しかし、大手グローバル企業ならともかく、初めて中華圏に進出する企業にとっては、まず現地の消費者に「名前を覚えてもらう」ところから始めなければなりません。

その点、KOLであればターゲット国で利用率の高いSNSを通じて、すでに多くのフォロワー(ファン)を獲得しています。つまり、KOLにタイアップを依頼することで、そのKOLが抱えている現地フォロワー全員に対し、自社ブランド・商品・サービスなどの情報を効率的かつ短時間で伝えることができるのです。

中には、たった1度の投稿でブランドの認知度が一気にあがったという事例もあります。認知度アップに即効性を求めるなら、自社のSNSアカウントから地道に情報を発信し続けるよりも、すでに現地で人気を集めているKOLに商品を紹介してもらった方が、圧倒的に効率的です。

現地の消費者に信用されやすい

現地の消費者に信用されやすいのも、KOLマーケティングならではの大きなメリットです。

前述した通り、中国のような社会主義国家では、政府や企業が発信するオフィシャルな情報をはじめ、マスコミ・広告などに対する信頼度が高くありません。とくに中国では食品の衛生問題や産地偽装、ブランドのコピー品などが社会問題になっているため、企業が直に発信した情報は信用されにくいのです。

これに対し、KOLはフォロワー自身が信用できる情報源として認め、日頃から関心を寄せている相手です。KOLがSNSを通して発信する「口コミ」は、現地の消費者に「信憑性の高い価値ある情報」として認知されます。

日本にいながら海外に向けてPRできる

3つ目のメリットは、「日本にいながら海外に向けてPRできる」という点です。

海外で活動しているKOLを起用するからといって、依頼主がわざわざ海外へ赴く必要も現地に事務所を構える必要もありません。

KOLにタイアップを依頼する方法については改めて後述しますが、どの方法を選択しようと日本にいながら依頼することは可能です。

KOLマーケティングのデメリット

一方、KOLマーケティングを実施する主なデメリットは、以下の2点です。

  • 費用が発生する
  • 人選が難しい

では、上記2つのデメリットについて順番に見ていきましょう。

費用が発生する

1つ目のデメリットは、「費用が発生する」という点です。とくに人気の高い売れっ子KOLを起用する場合は、相応のコストがかかります。

また、現地での認知度が低い日本企業の場合、KOLマーケティングの効果が一過性で終わらないよう、長期契約が必要になる場合があります。契約期間が長くなる、あるいは投稿数が多くなるほど高額なコスト発生するのは避けられません。

人選が難しい

2つ目のデメリットは、「人選が難しい」という点です。

そもそも、中国のSNS事情はもちろん、現地のトレンドや消費者が求めているニーズなどを把握していなければ、誰を採用すべきか基準が定まりません。

自社にとって最適なKOLを選ぶには、まず現地の事情をリサーチするところから始める必要があります。

地域別のKOLマーケティング活用トレンド

一口にKOLマーケティングと言っても、ターゲット国によって最適な活用方法は異なります。そこでこの章では、以下2つのエリアについてKOLマーケティングの活用トレンドをご紹介します。

  • 中国の傾向
  • 東南アジアの傾向

では早速、上記2つのエリアについて詳しく解説していきます。

中国の傾向

2018年度の「中国网红经济发展研究报告」によると、中国のKOL市場規模は約1,000億元と報告されており、日本円で実に1兆7,000億円にものぼります。

従来のKOLマーケティングでは商品を紹介することで広告収入を得るスタイルが主流でした。しかし近年では、自身で立ち上げたECショップを通じて物販ビジネスを展開する人が増加し、市場規模が格段にスケールアップしています。

ちなみに、中国ではネット上の著名人を「ネットセレブ」や「ネットアイドル」と呼び、中にはKOLとして企業とタイアップを組んで収益をあげている人もいます。

東南アジアの傾向

東南アジアは人口の平均年齢が若いため、SNSの普及率が非常に高いことで知られています。この地域特性も、東南アジアでKOL市場が拡大している理由なのでしょう。

ちなみに、東南アジア各国の人気のSNSは以下の通りです。利用率の高い順に記載しております。

  • インドネシア:YouTube、WhatsApp、Instagram、Facebook、TikTok
  • ベトナム:Facebook、Zalo、TikTok
  • タイ:TikTok
  • シンガポール:Facebook、Instagram、Twitter、TikTok
  • マレーシア:Facebook、Instagram、Twitter、TikTok

とくに急激にユーザー数を伸ばしているのが、若年層に人気のTikTokです。そのため、東南アジアでKOLマーケティングを展開する場合は、Facebook、YouTube、TikTokの組み合わせをおすすめしています。2大巨頭のFacebookとYouTube、さらに勢いがあるTikTokを網羅することで、東南アジアにおけるインターネットユーザーの96%にアプローチできるからです。

KOLマーケティングを始める手順

KOLマーケティングを始める流れは、以下の4ステップで進めるのが一般的です。

1商品とターゲット地域の選定地域の文化と商品が、KOLマーケティングの効果とマッチしているかを確認
2KOLとプラットフォームの選定自社商品との相性で選定
3プロモーション内容の企画アピールポイントや競合商品に対する優位性の、分かりやすい表現方法を考案
4SNSのブラッシュアップ操作性の改善や、外国人ユーザー向けの多言語対応

なお、2番のKOLの人選については本記事の後半で解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。

KOLに依頼する方法

KOLにタイアップを依頼する方法とは、以下の3種類が挙げられます。

  1. 直接KOLにコンタクトを取って依頼する
  2. KOLがアサインできるマーケティング会社に依頼する
  3. KOLがアサインできるプラットフォームを活用する

ただし、初めてKOLマーケティングに挑戦する場合、1番の「直接KOLにコンタクトを取って依頼する」方法はおすすめできません。

なぜなら、1番を選択した場合は、以下のすべてを社内で行う必要があるため、非常にハードルが高いからです。

  1. 自社ブランドや商材にとって、最適なKOLか判断する
  2. プロモーション方向性を共有する
  3. との情報をどう発信するか、表現方法を共有する
  4. 投稿のペースなど、全体の流れを共有する
  5. ターゲット国の法律に沿ったステマ対策を講じる
  6. 投稿数や出演料などを交渉する
  7. 法的に有効な契約書を作成し、契約する
  8. 投稿後の検証を行い、ブラッシュアップする

上記の項目をすべてこなすには、社内に現地の言語・ビジネスルール・習慣や常識などに精通したスタッフが必須なうえ、時間・手間・コストがかかってしまうのです。

一方、KOLがアサインできるマーケティング会社やプラットフォームは、最も重要な1番のキャスティングを任せることができます。ただし、KOLがアサインできるプラットフォームは、それぞれ業務の範囲が限られており、キャスティング以外は含まれていないサービスも珍しくありません。

その点、KOLがアサインできるマーケティング会社であれば、KOLの選定から投稿後のブラッシュアップまで一括で依頼できるので安心です。

なお、以下の記事ではKOLがアサインできるマーケティング会社をご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

KOLの選び方ポイント

KOLを人選する際、ポイントとなるのは以下の4点です。

  • 商品について専門的な知識はあるか?
  • 商品のターゲット層KOLのフォロワー層は一致しているか?
  • 現地の知名度は高いか?
  • 過去のインプレッションは高いか?

ここからは、上記の4点について個別に解説していきます。

商品について専門的な知識はあるか?

KOLの最大の強みである専門性を活かすには、商品と同じ分野に精通している人物を選ばなければなりません。美容サプリであれば、読者モデルよりも医療関係者の方が、ベビーグッズであれば、ママさんタレントよりも助産師や保育士の方が、説得力が増します。

商品のターゲット層KOLのフォロワー層は一致しているか?

過去の投稿をもとに、商品のターゲット層KOLのフォロワー層は一致しているかどうかをジャッジします。

たとえばコスメであれば性別や世代だけでなく、コスパ系やデパ地下系といった傾向など、自社商品と得意分野が完全に一致しているKOLが理想的です。

現地の知名度は高いか?

KOLの人選で見逃されがちなのが、「知名度」です。とんなに専門知識が豊富で多くの資格を持っていたとしても、現地の消費者の間で知名度が低ければ高い成果は見込めません。同じジャンルで活躍しているKOLの平均フォロワー数と比較してみましょう。

過去のインプレッションは高いか?

フォロワー数よりも重要なのが、インプレッションの数値です。投稿が表示された回数や「いいね」の獲得数、コメント数といった数値によってKOLの影響力を正確にジャッジすることができます。

中国圏でのサービス展開を考えているならKOLマーケティングを導入しよう

中華圏の消費者にアプローチできるKOLマーケティングは、日本を含めて世界中から注目されているビジネス手法です。圧倒的な人口を誇る中華圏の消費者にPRできれば、膨大な成果が期待できます。

ただし、KOLマーケティングを成功させるには、ターゲットとなる国の文化・市場の傾向・ビジネスルールなどを深く理解しておかなければなりません。この点をおろそかにしていると、場合によっては不買運動につながることもあるのです。

また、国内210万人・海外9,000万人を超える業界最大級のインフルエンサーネットワークを保有するInfluencer Japanでは、KOLとのアサインやフォロー業務も行っております。KOLマーケティングにご興味のある方は、ぜひInfluencer Japanにご相談ください。

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