アンバサダーマーケティングとインフルエンサーマーケティングの違いとは?それぞれのメリット・デメリットを比較
近年さまざまな企業がSNS上でのインフルエンサーマーケティングに力を入れています。
その一方で、よく見かけるようになったのが「アンバサダー」を募集するキャンペーン投稿です。
そこで今回は、何かと混同されがちなアンバサダーマーケティングとインフルエンサーマーケティングには、どのような違いがあるのかを解説していきます。
記事の最後には、双方の成功事例も紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
「アンバサダー」と「インフルエンサー」の違い
アンバサダーマーケティングとインフルエンサーマーケティングの最大の違いは、起用する人材です。
まずは基本となるアンバサダーとインフルエンサーの違いについて、以下の4項目に分けて解説していきます。
- アンバサダーの定義とは?
- インフルエンサーの定義とは?
- アンバサダーとインフルエンサーの違いとは?
- アンバサダーとアドボケイツの違いとは?
では早速、上記4項目それぞれについて詳しく解説していきます。
アンバサダーの定義とは?
アンバサダー(Ambassador)とは、企業に任命された「広報大使」を指しており、別名「宣伝大使」とも呼ばれています。
アンバサダーを定義する要素は、以下の2点です。
- 自社製品・サービスの、熱烈なファンであること
- 自社製品・サービスを、自らの意思で第三者にアピールすること
上記2つの要素に優劣はありませんが、両方を満たしていることがアンバサダーの必須条件です。
つまり、自社製品・サービスへのブランド・ロイヤルティが高く、利害関係がなくても他者におすすめしている、またはおすすめしたいと思っていれば、アンバサダーと定義されます。
ブランド・ロイヤルティ(Brand Loyalty)とは、特定のブランド製品・サービスを使用した経験から満足感を得て、盲目的に購入を繰り返す顧客のブランドに対する忠誠心・愛着度・信頼度などを表す言葉です。
重要なのは、アンバサダーを定義する2つの要素を満たしているかどうかであり、インフルエンサーのように「影響力の大小」は問われません。
なお、アンバサダーについては下記の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
インフルエンサーの定義とは?
一方、インフルエンサー(influencer)とは、自身が築いたコミュニティのメンバーに対し、購買行動を後押しするほどの強い影響力と、情報を発信する能力に長けている人物を指しています。
インフルエンサーを定義する要素は、以下の2点です。
- 自身の世界観などで他者を惹きつけ、独自のコミュニティを築く力がある
- コミュニティのメンバーに対し、特定の行動を促せるほどの強い影響力がある
上記2つの要素を満たしていなければ、インフルエンサーとは認定されません。
より具体的に言うと、InstagramやYouTubeなどで多くのフォロワーを獲得しており、なおかつ自身の発言によってフォロワーの思考や行動に影響を与えることができる人物を、インフルエンサーと定義しているのです。
なお、インフルエンサーについては下記の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
アンバサダーとインフルエンサーの違いとは?
ここまでは、アンバサダーとインフルエンサーそれぞれについて、個別に解説してきました。
この章では、より両者の違いが明確になるよう、完結に比較してみます。
アンバサダー | インフルエンサー | |
---|---|---|
定義する要素 | 自身の世界観などで他者を惹きつけ、独自のコミュニティを築く力がある コミュニティのメンバーに対し、特定の行動を促せるほどの強い影響力がある | 自身の世界観などで他者を惹きつけ、独自のコミュニティを築く力がある コミュニティのメンバーに対し、特定の行動を促せるほどの強い影響力がある |
求められる影響力 | 「影響力の大小」は問われる | フォロワーに対し、強い影響力が求められる |
企業との関係 | 企業から任命されるがあくまで自発的な行動なので、報酬が支払われるケースは稀 | 企業から報酬を伴う仕事として依頼を受けるので、利害関係がある |
なお、アンバサダーとインフルエンサーの報酬については、本記事の中盤で改めて解説しております。
アンバサダーとアドボケイツの違いとは?
インフルエンサーと同じく、アンバサダーと混同されがちなのが「アドボケイツ」という存在です。
結論から言うと、アンバサダーとアドボケイツの違いは、企業と契約を結んでいるかどうかで区別することができます。
アンバサダーは企業から任免を受け、正式に契約を交わしたうえで広報大使として活動します。
これに対し、アドボケイツは企業と契約を交わしません。
アドボケイツ(Advocates)とは、「支持者」または「「擁護者」と和訳される通り、自社商品・サービスの熱烈なファンとして自らポジティブな口コミを行っている、一般ユーザーを指しています。
一見、行動自体はアンバサダーと同じように見えますが、企業はアドボケイツの存在を認知していません。
したがって、企業が任命することも契約を交わすこともなく、当然ながら報酬も発生しないのです。
アンバサダーマーケティングとインフルエンサーマーケティングの違い
アンバサダーマーケティングとインフルエンサーマーケティングの主な違いは、以下の4点です。
- 目的・役割の違い
- SNSなど活動するメディアの違い
- 費用の違い
- 炎上リスクの違い
ここからは、上記4つの違いについて個別に解説していきます。
目的・役割の違い
アンバサダーマーケティングとインフルエンサーマーケティングは、大前提として目的・役割が違います。
アンバサダーマーケティングの目的が長期的な成果なのに対し、インフルエンサーマーケティングの目的は、一般的に即効性を伴う成果に比重が置かれているのです。
たしかに、アンバサダーマーケティングもインフルエンサーマーケティングも、以下のような成果を目的にしているという点は共通しています。
- 認知拡大
- ブランドイメージの向上
- 話題性づくり
- 新規顧客の獲得
- 一般的なユーザーをコアなファンへ育成する
- 売上げやサービス利用の向上
これらの目的を達成するために、インフルエンサーやアンバサーを起用してオフィシャルな情報を発信する、あるいはポジティブな口コミの拡散を促します。
ただし、アンバサダーマーケティングの目的は、あくまで長期的な成果です。
インフルエンサーマーケティングであれば短期のイベントでも成果が見込めますが、アンバサダーマーケティングの場合は年単位の契約を交わし、長期的なプロモーション戦略を練らなければなりません。
SNSなど活動するメディアの違い
2つ目の違いは、活動するメディアの範囲が異なるという点です。
アンバサダーマーケティングの場合は、各種SNS・ブログ・TV・ラジオ・雑誌など、全てのメディアが活動範囲に含まれています。
平たく言うと、アンバサダーマーケティングは活動範囲が限定されていないのです。
これに対し、インフルエンサーマーケティングの場合は、複数のSNSを併用するケースはあるものの、基本的には特定のSNS限定でプロモーションを実施します。
つまり、テレビ・ラジオ・雑誌などは、通常インフルエンサーマーケティングの活動範囲に含まれていないのです。
ただし、オーディエンスを現地に招く対面式のイベントは、いわゆるファンミーティングの要素が強いため、アンバサダーマーケティングにとってもインフルエンサーマーケティングにとっても有効な手法です。
実際に、大盛況を博した事例がいくつもあります。
費用の違い
3つ目は、マーケティングにかかる費用の違いです。
アンバサダーが広報大使として活動する原動力は、商品・サービスに対する愛着に他なりません。
あくまでファンとしての自発的な行為ですから、企業はアンバサダーに対して基本的に報酬を支払う必要がないのです。
もちろん、打ち合わせやイベントの開催で発生した交通費・宿泊費などは、企業側の負担となりますが、通常の広告宣伝費に比べると圧倒的に少ないコストで済みます。
ただし、例外として著名人を自社商品のアンバサダーに任命した場合は、割引特典や優待チケットなどを提供するケースもあるため、あらかじめ契約時に確認しておきましょう。
一方、インフルエンサーマーケティングを実施した場合、企業はインフルエンサーに対して出演料やコンテンツ制作料として、相応の報酬を支払わなければなりません。
インフルエンサーへの報酬はフォロワー数が多くなるほど高額になります。
インフルエンサーマーケティングの費用については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
炎上リスクの違い
炎上リスクに差があるのも、アンバサダーマーケティングとインフルエンサーマーケティングの代表的な違いです。
もちろん、差別的な発言やモラルが疑われるような配慮に欠けた言動が厳禁なのは、すべてのマーケティング手法に共通しています。
とはいえ、企業との間に金銭的な利害関係がないアンバサダーは、強引に商品をPRする必要がありません。
そもそも消費者は「アンバサダー=商品の愛用者」と理解していますので、押し売りや詐欺まがいの行為ではなく、正当なPR活動として受け入れてくれます。
したがって、アンバサダーマーケティングの場合、よほど非常識な発言・行動をしない限り、炎上するリスクはほぼありません。
これに対し、インフルエンサーは仕事として報酬を受け取っているため、実質的な成果が求められています。
多少強引な手法を使ってでも売上げをアップさせたいという「欲」が先行し、思わず失言してしまうインフルエンサーもいるのです。
とくに、消費者に宣伝だと告げずに営業活動を行うステマ(ステルスマーケティング)が発覚すると、あっという間にSNSで炎上してしまいます。
なお、2023年10月1日からスタートしたステルスマーケティング法規制については、下記の記事を参照してください。
メリットを比較
この章では両者のメリットについて、
- アンバサダーマーケティングのメリット
- インフルエンサーマーケティングのメリット
上記の2項目に分けてご紹介していきます。
アンバサダーマーケティングのメリット
アンバサダーマーケティングの主なメリットは、以下の5つです。
- ポジティブなレビューをしてくれるユーザーを確保できる
- 使用感や改善点など、消費者目線の正直な感想が聞ける
- 企業・アンバサダー・一般ユーザーの三者で、長期的に良好な関係性が構築できる
- 広告感が薄いため、一般ユーザーに受け入れられやすい
- 少ない費用で高い効果が見込める
とくに、3番はアンバサダーマーケティングならではのメリットと言えるでしょう。
インフルエンサーマーケティングのメリット
一方、インフルエンサーマーケティングを実施する主なメリットは、以下の10個です。
- マーケティング施策の選択肢が豊富で、状況に合わせて柔軟に対応できる
- 企業がアプローチしたいターゲティング層にピンポイントでリーチできる
- 消費者目線でレビューを発信してくれるので、分かりやすい
- 情報を信用してもらいやすい
- フォロワーからの拡散が期待できる
- 複数のインフルエンサーに依頼することで、トレンドを作ることもできる
- オンライン上での販売に繋げやすい
- 通常の広告よりも消費者に受け入れられやすい
- 広告のブロック機能を回避できる
- 自社サイトのSEO強化につながる
アンバサダーマーケティングと重複しているメリットもありますが、これほどメリットが揃っているマーケティング手法は、そう多くはありません。
デメリットを比較
この章では両者のデメリットについて、
- アンバサダーマーケティングのデメリット
- インフルエンサーマーケティングのデメリット
上記の2項目に分けてご紹介していきます。
アンバサダーマーケティングのデメリット
アンバサダーマーケティングを実施する主なでメリットは、以下の3つです。
- アンバサダーを発掘することが難しい
- 継続的に施策を運用しないと、効果を実感できずに終わる
- アンバサダーの熱が冷めてしまう恐れがある
中でも1番は、アンバサダーマーケティングの最大の難点と言われています。
インフルエンサーであればSNS上で活躍している人材を自力で探すことも、ブッキングを行っているマーケティング会社に依頼して人選を任せることも可能です。
しかし、本来アンバサダーは一般ユーザーですから、存在自体に気づける企業は少ないでしょう。
インフルエンサーマーケティングのデメリット
一方、インフルエンサーマーケティングの主なデメリットは、以下の5つです。
- インフルエンサーの選定が難しい
- インフルエンサーをマネジメントし、良好な関係性を維持する必要がある
- 説明の上手さは、インフルエンサーの力量によって左右される
- ステルスマーケティングによる炎上リスクがある
- 高いリテラシーを、関係者全員で維持する必要がある
アンバサダーマーケティングと同様に、1番の人選の難しさはインフルエンサーマーケティングにおいても最大のデメリットです。
キャラクターやコンテンツの傾向は自社ブランドのイメージと合致しているか、フォロワー層は自社のターゲット層と一致しているか、様々な視点から判断しなければなりません。
始め方を比較
ここからは両者の始め方について、
- アンバサダーマーケティングを導入する流れ
- インフルエンサーマーケティングを導入する流れ
上記の2項目に分けてご紹介していきます。
アンバサダーマーケティングを導入する流れ
企業がアンバサダーマーケティングを導入する流れは、以下の7ステップで構成されています。
- 目標を設定する
- 理想のアンバサダーを定義する
- アンバサダーの選定基準やガイドラインを策定する
- アンバサダーを探す
- できる事とできない事を洗い出す
- 施策の方向性を決める
- プログラムを運用する
上記の内、最も注力すべきは人選に関わる2番~4番までです。
アンバサダーの探し方や導入する流れについては、本記事の最初の章でご紹介した関連記事で詳しく解説しております。
インフルエンサーマーケティングを導入する流れ
一方、インフルエンサーマーケティングを導入する際は、以下の6ステップで進めるのが一般的です。
- 目的を明確にし、施策の方向性を決める
- KPIを設定する
- インフルエンサーを選定する
- インフルエンサーと契約を交わす
- 施策を実行する
- 効果検証を行う
初動の1番で、インフルエンサーマーケティングを展開するSNS(プラットフォーム)も決めておきましょう。
SNSによって相性の良い業種は異なります。
SNSの選定をミスってしまうと、インフルエンサーの選定で失敗する確率が高くなるのです。
アンバサダーマーケティングの成功事例
この章では、アンバサダーマーケティングの成功事例として、
- ワークマン(WORKMAN)
- ネスカフェ アンバサダー プログラム
上記2つのケースをご紹介します。
ワークマン(WORKMAN)
出典:ワークマン公式サイト
最初にご紹介する事例は、客層拡大に成功したワークマン(WORKMAN)のアンバサダープログラムです。
とくに注目して欲しいのは、以下2つの工夫をセットで行っている点です。
- 「質の高いアンバサダーを集める仕組み」を構築している
- 「報酬の代わりになるメリット」をアンバサダーに提供している
任命されたアンバサダーは、ワークマンのHPをはじめ自身のSNSに製品を着用している画像を投稿しています。
これらの投稿がアンバサダーのフォロワーやワークマンのHPを閲覧したユーザーから拡散され、コアなファン層が増加し、将来的に質の高いアンバサダーに成長していくのです。
ワークマンがアンバサダーの選定基準にSNSの活用スキルを設けていなければ、この仕組みは構築されていなかったでしょう。
また、アンバサダーへの報酬を支払わない代わりに、SNS上の活動で収益が得られるように手助けしているのも、お手本にしたいポイントです。
ネスカフェ アンバサダー プログラム
2014年にスタートした「ネスカフェアンバサダー」は、10万人ものファンを獲得した国内屈指の成功事例です。
特筆すべきは、大半の企業が少数精鋭のアンバサダーを起用しているのに対し、こちらのケースでは職場にネスカフェを導入した全ユーザーを、「アンバサダー」として任命している点でしょう。
マシンを無料で提供する手法は、現在ウォーターサーバーのブランド各社が実施していますが、日本ネスレがパイオニアとも言われています。
インフルエンサーマーケティングの事例
この章では、アインフルエンサーマーケティングの成功事例として、
- Qoo10×ふてこ さん
- 21時にアイス (名古屋覚王山店)×NAGOYAJIN
上記2つのケースをご紹介します。
なお、下記の記事でもインフルエンサーマーケティングの事例を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
Qoo10×ふてこ さん
1つ目の成功事例は、eBayが運営するネット通販サイト「Qoo10」と、女性に人気のエンタメ系インフルエンサー「ふてこ」さんのタイアップ事例です。
目標にしていた知名度アップに成功したのはもちろん、460万回再生・28,000件のいいね・245回の保存という大成功を収めました。
当時Qoo10が狙っていたターゲット層が好みに合わせ、ダンスや変顔といったエンタメ系+お笑い要素を持つ「ふてこ」さんを起用したことが、成功要因だったと考えられます。
また、ダンスコンテンツと好相性のTikTokを選択したのも、成功を後押ししたのでしょう。
21時にアイス (名古屋覚王山店)×NAGOYAJIN
NAGOYAJIN名古屋人さんのインスタアカウント:nagoyajin
フォロワー数:約 2.2万人(2023年11月時点)
こちらは、全国30店舗以上を展開する「21時にアイス」と、グルメ系インフルエンサー「NAGOYAJIN」さんのタイアップ事例です。
通常の投稿では500件ほどだった「いいね」が、3倍に相当する1,500件以上も集まりました。
この結果から、ブランドの認知拡大はもちろん新規顧客の開拓にも繋がったと推察できます。
アンバサダーマーケティングとインフルエンサーマーケティングの違いまとめ
アンバサダーマーケティングとインフルエンサーマーケティングは、似て非なるモノです。
たしかに、どちらも商品やサービスをPRするための施策ですが、アンバサダーとインフルエンサーとでは、求められている資質が全く違います。
アンバサダーには商品への忠誠心や愛着心が不可欠ですが、第三者への影響力は必須要素ではありません。
一方、インフルエンサーはその逆です。
アンバサダーマーケティングまたはインフルエンサーマーケティングを導入する際は、本記事の解説をぜひ参考にしてください。
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