ファンマーケティングとは?企業の成功事例と成功のポイントも解説

ファンマーケティングとは、既存顧客を優良リピーターへと育成し、長期的に売上を安定させるマーケティング手法です。
人口の減少や市場規模の縮小による影響から、新規顧客の獲得が難しくなっている昨今、ファンマーケティングへの注目度が高まっています。
そこで今回は、ファンマーケティングの基本やメリット・デメリット、企業の成功事例などについて徹底解説していきます。
成功のポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ファンマーケティングとは?
ファンマーティングとは、自社商品を一度でも購入したことがある既存顧客を「優良顧客」へと育成し、LTV(顧客生涯価値)の向上を促して売上を中長期的に安定させるマーケティング手法です。
ここで言う優良顧客とは、ブランドや商品・サービスに愛着を持ち、継続して購⼊・利⽤してくれる熱心なリピーターを指します。
人口減少・市場規模の縮小によって獲得の難易度が高くなっている新規顧客ではなく、すでに購入経験がある既存顧客にターゲットを絞り、ファン化に繋げるのが特徴です。
ファンマーケティングの施策6選
ファンマーケティングの主な手法は大きく以下の2種類に分かれており、どちらも優良顧客の育成と売上の安定化に役立ちます。
- 企業と既存顧客の間で密接なコミュニケーションを図る
- 顧客同士の交流を促し、仲間意識が強まるコミュニティを形成する
さらに細分化すると、以下のような施策がファンマーケティングに該当します。
- ファンイベント
- 地域限定イベント
- 参加型コンテンツの制作
- 相互交流がしやすい公式SNSアカウントの運用
- プレスリリースの配信
- ファンコミュニティの形成
ファンマーケティングを導入する企業が増えている理由
ファンマーケティングを導入する企業が増えている理由として、以下の5点があげられます。
- 新規顧客獲得が難しくなっているから
- 少子高齢化や市場縮小による成長の限界
- 口コミやSNS(UGC)の影響力が拡大しているから
- ブランドへの愛着が価格競争からの脱却を可能にするから
- 顧客ロイヤリティ向上で安定収益を実現できるから
順番に解説していきます。
新規顧客獲得が難しくなっているから
以下の通り、総務省の調査によると日本の総人口は右肩下がりに減少しており、この傾向は今後も続くと予想されています。

出典:総務省統計局 人口推計
つまり、消費人口全体が減少しているため、新規顧客の獲得が難しくなっているのです。
少子高齢化や市場縮小による成長の限界
日本では少子高齢化が長期化し、とくに消費行動がアクティブな若年層の減少が顕著になっています。
これに伴い、市場規模の縮小が加速しており、今後の市場が高度成長期と同レベルまで復活するとは考えにくい状態です。
新規顧客を獲得するハードルがあがっている昨今、既存顧客にアプローチするファンマーケティングに着目する企業が増えているのは、当然と言えるでしょう。
口コミやSNS(UGC)の影響力が拡大しているから
SNSの普及に伴い、一般人でも簡単に購入した商品の感想を「口コミ」や「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」という形で発信できるようになりました。
実際、多くの消費者が企業のオフィシャル情報を鵜呑みにするのではなく、SNS上の口コミやUGCを参考にして購入する商品を選択しています。
つまり、自社ブランドや商品に対してポジティブな口コミ・UGCの創出を促進する手段として、ファンマーケティングを導入する企業が増えているのです。
ブランドへの愛着が価格競争からの脱却を可能にするから
市場には類似商品・サービスが溢れ、品質や機能性だけで差別化するのは難しく、価格競争が加速しています。
この状況を打開すべく、注目を集めたのが既存顧客を優良顧客へと育成するファンマーケティングです。
ブランドへの愛着が高まるよう促すことで売上が中長期的に安定し、価格競争からの脱却を実現しています。
顧客ロイヤリティ向上で安定収益を実現できるから
ファンマーケティングには顧客ロイヤリティを向上させ、LTVを最大化する効果があります。
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、一顧客が生涯にわたって商品購入・サービス利用する総額のことです。
19世紀にイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した「パレートの法則」によると、売上の80%は20%の顧客によって生み出されると提言しています。
この2割の顧客とは、顧客ロイヤリティが高い企業のファンを指しており、ファンマーケティングとはコアなファンを増やし、LTVを最大化する有益な方法なのです。
ファンマーケティングのメリット
ファンマーケティングの主なメリットは、以下の6つです。
- 顧客ロイヤリティ向上による売上の安定化
- 新規顧客獲得コストの削減と口コミ効果
- LTV(顧客生涯価値)の向上とリピート促進
- 商品・サービス改善につながるフィードバック獲得
- ブランド価値やブランディングの強化
- ファン同士のコミュニティ形成による熱量の共有
順番に解説していきます。
顧客ロイヤリティ向上による売上の安定化
前述した通り、ファンマーケティングには顧客が企業や商品・サービスに抱いている信頼・愛着の度合いを示す「顧客ロイヤリティ」を向上させ、売上を中長期的に安定させる手段として非常に有効です。
ファンマーケティングによって企業と盛んに交流した既存顧客は、ブランドへの親近感や愛着が深まり、なかには「このブランドなら間違いない!」「このジャンルならこの商品一択!」と思ってくれる人も少なくありません。
新規顧客獲得コストの削減と口コミ効果
新規顧客を獲得するには、テレビCMをはじめとする不特定多数を対象にした広告が有効ですが、コストが高額になりがちなのが難点でした。
その点、ファンマーケティングであればリピーター育成のコスパが高く、新規顧客の獲得にかけていたコストを大幅に削減することができます。
さらに、ポジティブな口コミを創出する効果にも定評があるため、ブランド認知度アップや新規顧客の獲得にも役立ちます。
LTV(顧客生涯価値)の向上とリピート促進
リピート購入を促進し、LTV(顧客生涯価値)の向上を後押しできるのも、ファンマーケティングの代表的なメリットです。
1度の購入で終わるのではなく、2回、3回と繰り返し購入してくれるリピーターへの育成することで、1人の顧客から生涯にわたって継続的に得られる利益を指す「LTV」を底上げし、中長期的に安定した売上が見込めるようになります。
商品・サービス改善につながるフィードバック獲得
熱心なファンは、愛用しているブランドについて積極的に感想を提供してくれるだけでなく、まだ世に出ていない新しい商品・サービスの開発にも協力的です。
商品モニターの依頼を快く引き受けてくれるファンも多く、消費者目線の意見を提供してくれます。
なかには、企業が見落としていた改善点や斬新なアイデアなど、既存サービスのブラッシュアップや新商品の開発に役立つ情報が得られるケースも少なくありません。
ブランド価値やブランディングの強化
ブランディングとは、ブランド・商品の共通イメージや世界観を形成し、企業価値を高めることです。
ただし、ブランディングを成功させるには企業側が一方的に押しつけるのではなく、ファンと共に時間をかけて形成していく必要があります。
たとえば、ブランディングに成功している企業と言えばAppleやスターバックスが有名ですが、これらのファンは愛用者としての強い自負を持っており、めったに他社へ乗り換えることはありません。
しかも高価格帯でも購入してもらえるため、ムリに値下げして他社を競う必要もないのです。
これらを踏まえると、愛用者を増やすファンマーケティングはブランディングを成功させるために欠かせない施策と言えます。
ファン同士のコミュニティ形成による熱量の共有
ファン同士のコミュニティが形成されて、熱量が共有されやすいのもファンマーケティングの強みです。
同じ愛用品を使っていると、それだけで親近感が芽生え、さらには競争心も生まれます。
実際、ファン同士がコミュニティを形成しているブランドは愛用者の熱量が高く、新商品が発売されると我先にと購入する現象が発生しているのです。
ファンマーケティングのデメリット
一方、ファンマーケティングを導入する際は、あらかじめ以下のデメリットについても把握しておきましょう。
- 成果が出るまでに時間がかかる
- 炎上やネガティブな口コミのリスクがある
- コミュニティ運営の負担や人材リソースが必要になる
- コアファン偏重による成長鈍化の可能性がある
- 投資に対して短期的なROIが見えにくい
順番に解説していきます。
成果が出るまでに時間がかかる
自社商品を数度ほどしか購入したことがない既存顧客をヘビーユーザーまで育てるには、以下のような施策を繰り返す必要があるため、短期間で成功させるのは困難です。
- 購入促進のための商品紹介
- ブランディングの浸透
- リピーター施策
ちなみに前述したパレートの法則において、上位20%の優良顧客がもたらしている売上全体の80%という高い貢献度は、5〜6年という長期スパンが前提になっています。
炎上やネガティブな口コミのリスクがある
ファンマーケティングの主流はコミュニティWebサイトの運営ですが、近年では簡単に相互交流ができるSNS上で行う企業が増えています。
SNSは拡散力が強力なため、不適切な発言による炎上やネガティブな口コミが広まってしまうと、そう簡単に食い止めることはできません。
コミュニティ運営の負担や人材リソースが必要になる
企業とファン、あるいはファン同士の相互交流に役立つコミュニティ運営は、優良顧客を育てるうえで必要不可欠です。
その一方で、コミュニティを運営する労力や人材リソースの確保が負担となり、ファンマーケティングの継続を断念する企業も見受けられます。
たとえば、サポート対応が雑だったり質問のレスポンスが遅かったりすると、せっかく築いた信頼関係が一瞬で崩れてしまうのです。
また、ファン同士の親交を深める目的で設けたコミュニティの場合は、攻撃的なコメントが投稿されていないか常にチェックする作業が必要となり、相応の工数をかけなければなりません。
コアファン偏重による成長鈍化の可能性がある
コアファンだけを重視すると、意図せず新規顧客をないがしろにしてしまい、ブランド全体の成長が鈍化する可能性が高まります。
ファンマーケティングの一環としてコミュニティを運営する際は、熱量を問わず全フェーズのユーザーが参加できるよう、配慮しなければなりません。
投資に対して短期的なROIが見えにくい
投資に対して短期的なROIが見えにくいのも、ファンマーケティングの大きなデメリットです。
ROIとは、Return On Investment(リターン・オン・インベストメント)の略で、「投資利益率」や「投資収益率」を指します。
ファンマーケティングは成果が出るまで年単位の時間を有するため、投資に対してどれくらいの利益が出たのか、短期的な費用対効果のデータを数値化するのは難しいのです。
ファンマーケティングに成功している企業事例10選
この章では、ファンマーケティングに成功している企業事例として、以下の10選をご紹介していきます。
- ヤッホーブルーイング
- カゴメ
- ワークマン
- スノーピーク
- 無印良品
- スターバックス
- サンリオ
- 丸亀製麺
- カルビー
- ママリ
順番に解説していきます。
ヤッホーブルーイング

クラフトビールの製造・販売を行っている「株式会社ヤッホーブルーイング」は、年末の忘年会を模した「〆宴」をはじめ、Web会議システムを使って簡単に参加できるファンミーティングを定期的に開催しています。
参加するだけで豪華な景品がもらえる大抽選会など、多数のイベントが用意されており、コミュニティの集客効果を高めているのが特徴です。
カゴメ

出典:カゴメ株式会社
カゴメ株式会社は自社商品のファン同士が対話できる場所として、ファンコミュニティサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」を運営しています。
また、ファンが直接カゴメに質問や要望ができる仕組みになっており、CMでお馴染みのテーマソングも、ファンとブランドのコミュニケーションによって誕生しました。
ワークマン

出典:株式会社ワークマン
作業服や安全靴でお馴染みのワークマンは、自社ブランドのファンを公式アンバサダーに起用し、商品に関する情報提供を募っているのが特徴です。
公式アンバサダーは直接ブランドに情報を提供するのではなく、SNSを中心にUGCを投稿することで、新規・既存を問わずさまざまなフェーズのユーザーに対し、同社の商品を目にする機会を生み出しています。
スノーピーク

出典:株式会社スノーピーク
上の画像は、アウトドア用品ブランド「スノーピーク」が開催している都市型焚火イベント、「焚火トーク」の様子です。
「焚火トーク」は、スノーピークが開催しているファンミーティング「Snow Peak Way」の一環で、愛好家とスタッフが交流を深めて信頼関係を強化するイベントになっています。
無印良品

株式会社良品計画は、自社の主要ブランドである「無印良品」に特化したファンコミュニティサイト、「IDEA PARK」を運営しています。
「IDEA PARK」の運営目的は、消費者の声を集めて新商品を共同開発することです。
この取り組みにより、2014年にスタートしてから2年間で10,000件以上のリクエストがファンから集まり、200点以上の新商品が誕生しています。
スターバックス

スターバックスコーヒージャパンは都道府県ごとに限定商品を展開し、地域や店舗に対して「自分ごと化」を促すことで、ファンとの繋がりを深めているのが特徴です。
2021年には日本上陸25周年を記念し、「地域・地元とつながる」というコンセプトの元、エリアごとに47通りのストーリーを込めた「47 JIMOTO フラペチーノ® THANKS WEEK」を開催し、1週間で延べ約250万人もの集客に成功しています。
サンリオ

出典:株式会社サンリオ
ハローキティやマイメロディでお馴染みのサンリオは、スマホで簡単に参加できるバーチャルライブイベントを開催し、世界中のキャラクターファンを巻き込んだファンマーケティングで成功を収めています。
毎年開催されているSanrio Virtual Festivalは、年に一度のビックイベントという話題性の効果も相まって好評を博しており、2023年度は120万人、2024年度は3週間で236万人以上もの来場者数を記録しました。
丸亀製麺

出典:株式会社丸亀製麺
株式会社丸亀製麺は、さまざまなファン参加型イベントでファン化を促進しているのが特徴です。
ご当地スタンプを集めるとオリジナルグッズがもらえる「わがまち釜揚げうどん47」、25周年を記念した「丸亀製麺かき揚げ総選挙2025」などを開催し、いずれも多くの愛好家が参加しています。
カルビー

出典:カルビー株式会社
カルビーは、愛好家と自社の社員が交流するイベント「Fan With! Project」を開催し、2024年度の実施後は商品購入金額が約1.6倍を記録するほどの大成功を収めました。
このイベントでは1年を通して以下のような企画が提供されており、特に熱狂的なファン11名には、運営企画メンバーとして参加する権利が与えられます。
- じゃがいも収穫体験
- 工場見学
- 特別試食会
ママリ

出典:コネヒト株式会社 ママリ
コネヒト株式会社が運営するママリは、「ママの一歩を支える」をコンセプトに掲げている情報サイトです。
妊活中の女性や子育て中のママから寄せられた情報を元に、「ママリ口コミ大賞」を発表するなど、ファンと密接なコミュニケーションを図っています。
また、ママ向けリュックをはじめファンと共同で多くのヒット商品を生み出しているのも、ファンマーケティングによる実績と言えます。
ファンマーケティングを成功させるためのポイント
ファンマーケティングを成功させるための主なポイントは、以下の7つです。
- ファンの定義と目的を明確にする
- ファンを理解し、顧客体験を設計する
- 双方向の交流機会を増やし信頼関係を築く
- ファン同士が交流できる場を提供する
- KPIやNPSを活用して成果を数値化する
- VOC(顧客の声)を活かして共創する
- 短期的成果ではなく長期的な視点で取り組む
順番に解説していきます。
ファンの定義と目的を明確にする
ファンの定義が曖昧だとアプローチの仕方が的外れになってしまい、高確率でリピーターの育成に失敗します。
ファンマーケティングの目的は、自社にとっての理想的なファン(リピーター)を育成することです。
自社にとってのファンを定義することで、目的に適したアプローチ方法が見えてきます。
ファンを理解し、顧客体験を設計する
まずは、すでに獲得しているロイヤリティの高いファン層について、詳しい属性を洗い出す必要があります。
ただし、性別や年代といったありきたりな条件だけでは十分とは言えません。
自社のファンはどのような人物なのか、どんな価値観をもっているのか、何よりブランドのどこに魅⼒を感じているのかを深く理解できれば、ファンが喜んでくれる顧客体験を設計することができます。
双方向の交流機会を増やし信頼関係を築く
ファン化に欠かせないのが、信頼関係の構築です。
既存顧客と企業が双方向で交流できる機会を提供することで、自社への関心・親近感が高まり、着実に信頼関係が確立されていきます。
ファン同士が交流できる場を提供する
ファン同士が交流できるコミュニティの場を提供することで、互いの共感が高まり、ブランドへの愛着度が向上します。
同じブランドを好む者同士で仲間意識が芽生え、意見交換が活発になったり新しいアイデアが生まれたりと、さまざまな相乗効果が期待できるのです。
KPIやNPSを活用して成果を数値化する
目標達成度を測る「KPI」や顧客ロイヤルティの測定指標である「NPS」を活用し、成果を数値化するのもファンマーケティングを成功させる重要なポイントです。
これらを数値化することで、現状の施策を継続すべきか、それとも別の施策へとシフトチェンジすべきかを判断しやすくなります。
VOC(顧客の声)を活かして共創する
新商品の開発に自分の意見が反映された消費者は、そのブランドに強い愛着を抱きます。
事実、多くの企業がVOC(顧客の声)を活かして新商品を共創し、ファン化を成功させているのです。
アイデアを募集するイベントを開催すれば、話題づくりにも役立ちます。
短期的成果ではなく長期的な視点で取り組む
ファンマーケティングは顧客ロイヤリティの高いリピーターを育成する有効な手段ですが、短期間で成果は出せません。
すぐに成果を求めるのではなく、年単位の長期的な視点で取り組む必要があります。
企業事例から学び、自社にあったファンマーケティングを始めよう
人口の減少や市場規模の縮小が加速するなか、注目を集めているのが既存顧客の顧客ロイヤリティを高めてリピーターへと育成するファンマーケティングです。
事実、多くの企業が難易度・コストが高い新規顧客の獲得から、売上が長期的に安定するファンマーケティングへとシフトチェンジしています。
ただし、ファンマーケティングはアプローチ方法が多様なうえ、短期間では成果が出ないため、正しい方法を見極めるのは簡単ではありません。
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