ポップアップストアとは?メリット・デメリット、費用相場、成功させる方法を解説
ポップアップストアとは、突然開店して数日~数週間ほどで閉店する、期間限定の店舗形態のことです。
ブランドの世界観が表現できるポップアップストアには、認知度の拡大や話題作りに適しているなど、多くのメリットがあります。
ただし、すべてのポップアップストアが成功している訳ではありません。
そこでこの記事では、ポップアップストアと常設店舗との違い、メリット・デメリット、成功させる方法などについてまとめてみました。
費用相場や成功事例についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ポップアップストア(ポップアップショップ)とは?
ポップアップストア(ポップアップショップ)とは、不意に現れる・出現するという意味を持つ英単語「pop up」が使われている通り、期間限定で出店する店舗形態のことです。
突然開店して数日~数週間ほどで閉店してしまうのが特徴で、日本では「催事店舗」や「催事出店」とも呼ばれています。
ポップアップイベントの一種であるポップアップストアは、ブランドの認知拡大や新商品をリリースした際の話題づくりとして、非常に有効なプロモーション手法です。
アパレル、化粧品、家電といった小売りはもちろん、近年ではアプリなどの体験型ポップアップストアも人気を集めています。
ポップアップストアと常設店舗との6つの違い
以下の通り、ポップアップストアと一般な常設店舗を6つの項目で比較してみると、その違いは明らかです。
比較項目 | ポップアップストア | 常設店舗 |
---|---|---|
目的・ゴール設定 | マーケティング、ブランディング、市場調査、販売など多岐にわたる | 販売による収益作り |
出店期間 | 数日~数週間ほどの「期間限定」 | 可能な限り、長期間にわたって運営を続ける |
立地 | 通行人の多さ、アクセスの良さなど、「集客のしやすさ」と「収容スペースの広さ」で選定 | ターゲット層とマッチした住民の多さ、アクセスの良さ、競合店の少なさなど、長期的な観点から選定 |
店舗設計 | ブランドの世界観が伝わるかどうかを重視 | 商品の選びやすさを重視 |
接客スタイル | ブランド理解の促進や、ファンを育成するためのコミュニケーションを重視する | 販売を促す |
顧客体験 | 期間限定という「特別感」が得られる | 欲しい商品が安定的に購入できて、新商品との接点も受動的に得られる |
ポップアップストアは短期集中型で費用対効果を検証する必要がありますが、一般な常設店舗は、いかに長期的かつ安定的に利益を出し続けられるかが焦点になります。
ポップアップストアを出店する目的
ポップアップストアを出店する目的は多岐にわたりますが、とくに多いのが以下の9つです。
- 商品やサービスの売上
- ブランドの世界観を伝える
- ブランドや商品の認知拡大
- テレビやWebメディアでの露出アップ
- SNSでの拡散によるリーチ
- 新規顧客の獲得
- テストマーケティング
- POC(コンセプト検証)
- ユーザーヒアリング
- コミュニティの醸成
ただし、傾向として商品やサービスの売上による収益獲得を目的にしているポップアップストアは少数派です。
むしろ、ほとんどのポップアップストアはメディアでの露出やSNSでの拡散を促す話題づくり、テストマーケティングやユーザーヒアリングを主な目的に定めています。
ポップアップストアは、商品を手に取ったユーザーがどのような反応を見せるか、リアルな感想をリサーチできる絶好の機会です。
無料で試供品を配布するサンプリングとは違い、定価で商品を陳列するポップアップストアでは、
- 価格は適正か?
- 色展開に不足はないか?
- 興味を持ってくれるターゲット層は想定と一致しているか?
など、詳細なデータが収集できるため、商品開発の改善やマーケティングにフィードバックすることができます。
ポップアップストアのメリット
ポップアップストアを出店する主なメリットは、以下の7つです。
メリット | 詳 細 |
---|---|
ブランドの世界観を表現・発信できる | 量販店などで他の商品と一緒に陳列されているブランドにとって、ポップアップストアは店舗設計・企画・ノベルティグッズ・接客などを通して、ブランドの世界観を表現・発信できる貴重な機会。 消費者にポップアップストアでブランドの世界観を体験してもらうことで、新規顧客の獲得やファンの育成に繋がる。 |
話題作りにつながる | イベント性の高さと期間限定という希少性から、メディアやSNSで取り上げられやすいため、常設店をオープンするよりも短期集中型の話題づくりに適している。 フォトジェニックなディスプレイ装飾を施すことで、ポジティブな話題としてSNSで拡散されやすくなるのも強み。 |
ブランド認知度の拡大に繋がる | 日頃、自社ブランドと接点がない消費者に対し、タッチポイントを提供できるため、ブランドの存在を認知してもらうきっかけになる。 |
消費者と対面でコミュニケーションがとれる | オンライン上のみで交流するECサイトとは違い、消費者と対面でコミュニケーションが取れる分、密接な関係性が築ける。 |
新商品のプロモーションに適している | ポップアップストア自体に話題性があるため、新商品のプレスリリースに打って付けの施策。 インフルエンサーマーケティングと組み合わせることで、SNSでの拡散も期待できる。 |
テストマーケティングの効果測定がしやすい | 先行販売によって売上や消費者の反応をリサーチしたうえで、販売継続の可否を判断すれば、リスクを最小限に抑えることができる。 |
常設店を出店するよりもハードルが低い | 敷金や礼金といったテナントをレンタルする際の初期費用、大がかりな内装費、人件費などの経費が抑えられるうえ、長期契約によるリスクが回避できる分、常設展よりも出店するハードルが低い。 |
ポップアップストアのデメリット
結論から言うと、ポップアップストアには多くのメリットがあり、デメリットはほとんどありません。
あえて言うなら、短期だからこそ売上で費用分をペイできないリスクがあることです。
具体的な費用相場については次の章で後述しますが、期間限定とはいえ相応のコストがかるのは否めません。
会場や機材のレンタル代、商品の配送費や人件費に加え、テナントによっては出店料として売上高の3~4割を徴収されるケースもあるのです。
ポップアップストアの費用相場
以下は、ポップアップストアを出店する際にかかる費用相場の目安です。
- 商品やサービスのPR:200万円~500万円
- 物産展:200万円~300万円
ただし、ポップアップストアの経費は目的や規模、期間などによって大きく変動します。
たとえば、1日1万円のレンタルスペースで1週間コスメのポップアップストアを開催した場合、経費の内訳は以下の通りです。
- レンタルスペースのレンタル代:1万円×7日=7万円
- ディスプレイや内装工事費:30万円
- レンタル什器(商品棚やPOSレジなど):20万円
- バーコード決算などの手数料:3万円
- 広告宣伝費(キャンペーン告知や看板など):20万円
- 印刷費用(DMやショップカードなど):5万円
- ノベルティグッズの制作費:20万円
- 商材の配送料や在庫管理:5万円
- 消耗品費(袋、テープ、消毒液など):5万円
- ユニフォーム:3千円×5人×7日=10万5千円
- 人件費:1万円×5人×7日=35万円
上記を合算するとトータル1,605,000円となり、当日に大量の集客が見込めるようなら、誘導スタッフの人件費も予算に含めておく必要があります。
とくに、新商品のリリースイベントとして全国規模で複数のポップアップストアを開催する場合は、ゆうに1千万円を超えるケースも珍しくありません。
何より、集客率の高い出店場所ほどレンタル料金が高額に設定されているため、費用対効果を踏まえた場所選びが重要です。
ポップアップストアの出店場所
ポップアップストアの出店場所として、以下のような選択肢があります。
- レンタルスペース
- ショップの一部スペース
- 商業施設内のスペース
- 貸店舗
- 移動販売車
ここからは、それぞれの出店場所にはどのようなメリットとデメリットがあるのか、個別に解説していきます。
なお、渋谷でポップアップストアのレンタルスペースをお探しの際は、以下の記事を参考にしてください。
レンタルスペース
レンタルスペースとは、持ち主が指定した用途に限り、時間や期間に応じて貸し出すサービスで、以下のようなメリット・デメリットがあります。
▼レンタルスペースのメリット
- 場所・広さ・金額など、条件で比較検討しやすい
- キッチンやテーブルなど、什器付きのスペースなら費用を抑えられる
▼レンタルスペースのデメリット
- ブーズの設営や内装の装飾に、制限を設けているスペースもある
- ディスプレイ業者が指定されているスペースもある
ショップの一部スペース
カフェや小売店など、ショップの一角を間借りしてポップアップストアを出店するのも1つの方法です。
出店スペースは狭くなりがちなため、小サイズの商品や規模の小さいポップアップストアに適しており、客層や集客の見通しが立てやすいという強みがあります。
商業施設内のスペース
百貨店やショッピングモールなどの商業施設では、以下のようなスペースをポップアップストア用に貸し出しているケースもあります。
- ギャラリーやイベントスペース
- 駐車場や屋上などの屋外スペース
- エスカレーター横やエレベーター前などのオープンスペース
購買意欲が高い消費者の集客が見込める反面、オープンスペースの場合は狭い空間でブランドの世界観を表現する工夫が必要です。
貸店舗
商店街の貸店舗を短期間だけ借りるのも、有効な手段です。
契約中は店舗の正面スペースを活用した「路面店」を出店できるという強みあり、人通りが多い商店街であれば、告知をしなくても一定の集客が見込めます。
ただし、貸店舗の契約は月単位が一般的なので、数日だけ借りたい場合は交渉が必要です。
移動販売車
フードやドリンクをPRするポップアップストアに適しているのが、移動販売車です。
文字通り、お祭りや商業施設の駐車場など、さまざまな野外スペースに移動できる強みを持っています。
その反面、スペースが狭いため来店者とコミュニケーションが取りにくく、現地でアンケートを回収するのもままなりません。
移動販売車をポップアップストアとして活用する際は、後日アンケートを回収できるよう、QRコードを記載しておきましょう。
ポップアップストアを出店する流れ
ポップアップストアを出店する大まかな流れは、以下の8ステップに沿って進めます。
- 出店する目的(ゴール)を設定する
- 競合店の市場調査
- コンセプト設定と企画立案
- 出店エリアと施設の選定
- スタッフ募集など、出店の準備
- 告知プロモーション
- 設営
- オープン
閉店後は撤去作業を行い、後述する効果測定を行います。
ポップアップストアの効果測定の方法とKPI例
ポップアップストアの閉店後は、今回の事例を次回以降の施策に反映できるよう、必ず効果測定を行いましょう。
効果を測定するには、前提となる以下のようなKPI(達成度合いを評価する指標)を設定しておく必要があります。
KPI | 効果測定の方法 |
---|---|
来客数 | もっとも基本となる指標で、リーチできた人数を測る重要な数値。 以下のような来客数を母数にすることで、リピート率をはじめ、購買やSNS投稿といった「行動を起こした人の割合」を測定することができる。 ・期間中の合計来客数 ・日ごと、時間帯ごとの来客数 |
販売数 | テストマーケティングとして重要な指標。 以下のように条件つきで測定することで、どの商品をどのくらい増産すべきか見通しが立てやすくなり、今後のPR施策や商品開発のヒントにもなる。 ・バリエーションごとの販売数 ・セットで購入された商品の傾向 |
SNSでの言及数 | どのくらい、ブランドの認知拡大やファン育成に繋がったかが分かる指標。 言及されたトータル数や性別の割合だけでなく、以下のように内容にフォーマスしてデータを収集するのがコツ。 ・ポジティブな投稿率 ・ネガティブな投稿率 |
検索数 | ブランドに興味を持った人数や割合が分かる指標。 SNSの「いいね」や「フォロー」よりも手間がかかるため、検索数の増加は、より深くブランドに興味を持った「見込み客」の増加と捉えることができる。 |
来店者の アンケートデータ | 定量データと定性データの両方を収集できるのが強み。 ・定量データ:売上高や市場占有率など、数値化できる情報 ・定性データ:数値化や分類が難しい、言葉で表現された情報 とくに定性データは、消費者の生の声が反映されている貴重な存在。 アンケート回答者にクーポンやインセンティブを付与しておくと、ポップアップストア閉店後の購買行動を促すことができる。 |
ポップアップストアを成功させる方法
この章では、ポップアップストアを成功させる以下7つの方法について解説していきます。
- 最適な出店場所を選ぶ
- より多く集客できる「時期」を選ぶ
- ブランドの世界観を体験してもらう
- SNSで拡散される「仕掛け」を作る
- データを収集・比較する「仕組み」を作る
- キャッシュレス決済を導入する
- 次の行動を促す「導線」を作る
- ポップアップショップに強いイベント会社に相談する
では早速、順番に見ていきましょう。
最適な出店場所を選ぶ
ポップアップストアの成否は、「出店場所」によって大きく左右されます。
エリアや出店スペースについては必ず事前リサーチを行い、以下の項目を検証しましょう。
- ブランドのターゲット層を集客できるエリアか?
- 来店客数が変動する要因はあるか?
- レンタルスペースの雰囲気は、ブランドの世界観と一致しているか?
- 周辺にポスターやチラシを置いてくれそうな店舗はあるか?
より多く集客できる「時期」を選ぶ
より多くのお客様を集客するには、お財布のヒモが緩む「時期」にもこだわるべきでしょう。
時期を吟味する際は、以下のように商材との相性に注目するのがポイントです。
- 飲食系:メイン食材の「旬」の時期
- ジュエリー・ファッション系:レゼント需要がアップするクリスマス前
- コスメ系:お肌のコンディションや使用するカラーが変わる、季節の変わり目
ちなみに、人出が増えるセールの時期は認知度拡大の効果が期待できる反面、価格競争に巻き込まれやすいという弱点から、売上アップを目的とした出店を控える企業も見受けられます。
このように、ポップアップストアを開催する時期は、目的によっても向き不向きがあるのです。
ブランドの世界観を体験してもらう
ポップアップストアを成功させるために欠かせないのが、いかにブランドの世界観を伝えられるかどうかです。
ブランドの世界観は、存在を知っている程度の消費者を「コアなファン」へと醸造する大きな切り札になります。
そもそも、よほどニッチなジャンルでない限り世の中には類似品が溢れており、純粋に商品のスペックだけで売上上位を勝ち取るのは、簡単ではありません。
つまり、消費者と対面でコミュニケーションが取れるポップアップストアは、商品の付加価値であるブランドの世界観を発信できる貴重な機会であり、競合商品と差を付けるチャンスでもあるのです。
SNSで拡散される「仕掛け」を作る
ポップアップストアは希少性が高いため、自然発生的にSNSでの拡散が期待できますが、受け身で待っている必要はありません。
以下のように、あらかじめ「仕掛け」を作っておくことで、よりSNSで拡散される確率があがります。
- 会場内にフォトスポットを設営しておく
- フォトプロップス(写真撮影の際に手にもつ小道具)を用意しておく
- UGC(ユーザー参加型コンテンツ)の投稿を促す
- SNS上のハッシュタグキャンペーンと組み合わせる
もちろん、「インスタ映え」する店舗づくりもSNSでの拡散を促す有効な手段です。
データを収集・比較する「仕組み」を作る
ポップアップストアでの経験値を今後のメーケティングや商品開発に役立てるには、成果を正確に把握しなければなりません。
以下のように、あらかじめデータを収集する仕組みを準備して、開催前後で変化を比較できるようにしておきましょう。
- アンケート用紙を用意して、満足度や商品の評価などを記入してもらう
- 開店前の売上高・商品別の販売個数・客単価などを、帳簿や在庫管理システムで確認しておく
- 開店前のSNSフォロワー数や自社サイトへの流入数などを、データ化しておく
- 自動的にデータ分析が可能なキャッシュレス決済を導入する
なお、キャッシュレス決済については次の章で詳しく解説します。
キャッシュレス決済を導入する
ポップアップストアを成功させている企業の多くが、キャッシュレス決済を導入しています。
その理由は、キャッシュレス決済を導入することで、以下のようなメリットが得られるからです。
- 平均単価や商品別の販売個数など、詳細なデータ分析が一元管理できる
- 素早く決済できるので、売上アップにつながる
- 現金管理の手間が省ける
- レジ締めの時間を短縮できる
次の行動を促す「導線」を作る
ポップアップストアに来店した人々は、ブランドへの関心が高まっている状態です。
このタイミングを逃さず、ECサイトやSNSのフォローを促す「導線」を用意しておきましょう。
来店者に次の行動を促すには、以下のような仕掛けを用意しておくのが有効です。
- レジ周りやショップカードに、リンク先へ飛ぶと特典が貰えるQRコードを掲載する
- 来店者限定の割引クーポンを配布する
ポップアップショップに強いイベント会社に依頼する
ここまで解説してきた通り、自社のリソースだけでポップアップストアを成功させるには、いくつものハードルを超えなければなりません。
だからこそ、ほとんどの企業がポップアップストアを開催するノウハウを持っている、イベント会社に外注しているのでしょう。
イベント会社では、事前の市場調査や企画立案、当日の運営や閉店後の効果測定など、さまざまなサービスを提供しており、何より商材に適した「勝ちパターン」を持っています。
ポップアップストアの実績が豊富なイベント会社をお探しの場合は、以下の記事を参考にしてください。
ポップアップストアの成功事例
ポップアップショップの成功事例としてご紹介するのは、江崎グリコが開催した「Pocky THE GIFT」です。
2019年11月~2020年4月にかけて、ポップアップショップとしては異例の長期開催ではあったものの、デパートのマルイ内専用ショップという高級感も相まって、新たな客層を獲得しました。
特設ショップでは、定番のミルクチョコレートにメロンやベリーといった新しいフレーバーを加えた6種類が、カラフルで可愛らしいパッケージの限定オリジナルギフトボックスとして販売されており、特別感を演出しています。
結果、これまでの「庶民的なおやつ」というイメージを覆し、クリスマスやバレンタインデーにぴったりなプチギフトとして認知されるようになったのです。
まとめ
ポップアップストアとは、ブランドの世界観が表現できるうえ、話題づくりにも役立つ優れたプロモーション施策です。
新商品のプロモーションやテストマーケティングとしても有効なため、多くの企業がポップアップストアを出店しています。
とはいえ、ポップアップストアで大きな成果をあげるには、専門的なスキームが必要なのも事実です。
ポップアップストアの実績が豊富なイベント会社への外注を検討されている場合は、ぜひ「株式会社ハーマンドット」へご相談ください。
出店場所のリストアップから当日の運営、閉店後の効果測定まで、ご予算に合わせた一気通貫のサポートを提供させていただきます。
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